関節リウマチ(以下リウマチ)とは、全身の関節に炎症が起こり、関節が腫脹する病気です。進行すると、骨の変形を起こしますが、初期段階では、関節を構成する「滑膜」といわれる膜の組織に炎症が起こる滑膜炎による「腫れ」や「痛み」が主な症状です。
リウマチの診断は、症状・検査・X線の所見などから総合的になされます。 変形性の関節症や痛風などはリウマチと間違われやすい疾患ですが、リウマチにはこれらと異なる特徴的な症状が現れるため、以下のような診断基準が設けられています。
このうち4項目以上満たせば関節リウマチと診断します。
ただし、(1)から(4)までは6週間以上持続することが必要です。
※アメリカリウマチ協会(ARA)(現:アメリカリウマチ学会(ACR))による
リウマチは、自己免疫疾患(自己体内の免疫システムが異常をきたし、本来守るべき己の細胞や組織を敵と認識し攻撃してしまう病気)に分類されています。(「飼い犬に咬まれる」と表現されることもあります。)
原因は不明で、遺伝・体質・ストレスなどの様々な因子が複雑に絡み合って発症すると考えられています。
発症年齢で最も多いのは、30~40歳代ですが、60代までが発症しやすい年齢と言われています。また、性別では女性に特に起こりやすい疾患と言えます。
西洋医学的なアプローチとしては、主に薬物療法、リハビリテーション、手術療法が行われています。
中医学でリウマチは、「痺証(ひしょう)」のうちの1つに分類されています。「痺」とは、「つまって通じないこと=痛み」を意味します。痺証は自然界の気候変化である「六淫の邪」が原因となっています。(ここでは特に風・湿・寒・熱が関連します。)この「邪」が人体に侵入し、気・血・津液(き・けつ・しんえき)の通り道である「経絡(けいらく)」をつまらせ、運行障害を起こすため痛みを誘発します。
まず、痺証の分類についてみていきましょう。痺証は、病因にもとづいて下記の4つに分類されます。
※その時々の気候・環境・体調によって同一患者が様々なタイプの痺証を経験することがあります。(つまり、同じ人が行痺になったり、着痺になったりします。)
それぞれの「邪」には特性があり、その特性によって症状も上記のように変化します。 また、「六淫の邪」はあくまで病気の誘因因子といえ、人それぞれの体質によって受けやすい「邪」があります。その時々の気候によっても影響を受ける「邪」は異なるため、体質別の治療が必要となってきます。
さて、それではどのようなタイプの人が、これらの「邪」を受けやすくなっているのでしょうか?
リウマチは、中医学的に大きく5つのタイプ(気虚タイプ・陰虚タイプ・気陰両虚タイプ・気滞タイプ・痰濁タイプ)に分けることができます。
タイプ別にみた特徴的症状をみていきましょう。
先天的不足、食べ物などからの摂取不足、過労、慢性疾患などにより、身体のエネルギー源となる気が不足するため、栄養や血液を運ぶ力が弱まります。このため、関節が栄養されずに痛みを起こす原因となったり、湿という二次的病理産物を生み、体内に滞りを起こす原因となります。(滞りが起こったところは、関節の腫脹が生じます。)また、気の不足は、免疫力の低下を招くため、六邪の影響を受けやすい状態となってしまいます。
慢性疲労、長期間の病気、出産、加齢などによって体内の陰(水分)が不足するため、体内の津液も不足し、流れが潤滑でなくなります。また、津液が不足すると血管が細くなってしまい、栄養や血流が行き渡りにくい状態になってしまいます。さらに関節部は、曲がる部位ですので、流れが悪くなりやすいところです。血管が細くなり栄養や血流が届きにくくなると、関節部が栄養不良や血流の代謝不全を起こし、水分が一定の場所で停滞して関節部に渋滞してしまいます。結果関節は腫脹し、痛みを起してしまいます。
慢性的な疲労・長期間の病後などにより身体的な機能失調により、気の不足だけでなく、血・津液の不足も招きます。エネルギーを運搬する力も低下し、関節にも栄養が行き渡らず痛みが生じます。体内での代謝障害が起こるため、下記のような様々な症状が生じます。
身体的疲労による気の運搬力が低下や、精神的ストレスによる気の滞りにより、気・血・津液の流れがスムーズでなくなってしまいます。そのために、身体内の様々なところに滞りが生じ、関節に栄養が行き渡らなくなり、循環不全を起こし痛みが生じます。
飲食の不摂生(甘いもの・油っこいもの等を好んだり、偏食)により、脾や胃が損傷され「痰」と呼ばれる2次的病理産物が形成され、気・血・津の流れを阻害します。痰が形成されると、身体全体の流れが悪くするために、関節に栄養がいきにくくなり痛みを起こします。また、形成された痰によって局所的停滞を起こすために、関節が腫脹します。
リウマチは、様々な生活環境の変化(出産、転勤、転職等)によるストレス(中医学では「内因(ないいん)」といいます。)により発症し、天候や気温、湿度(中医学では「外因(がいいん)」といいます。)によって痛みを誘発します。激しい天候や環境変化によって、痛みの程度も左右されることが多いです。
鍼灸治療は、痛みやその他体調の悪い部分を、上手にメンテナンスし、いい状態を維持するお手伝いができます。 当院では、病院のお薬と併用されている方も通院されています。ご自分にあう治療法を一緒に見つけていきましょう!