ニキビとは年齢、性別を問わず、何らかの理由で詰まった毛穴の中で余分な皮脂が角質と混ざった結果、起きてしまった皮膚の炎症のことです。
毛穴が詰まると皮脂と角質が混じり合い、一般に黒ニキビ(毛穴が開いて中身が見えている状態)や白ニキビ(毛穴が閉じている状態)と呼ばれるコメド(面疱)ができます。このコメドを食料に繁殖した「アクネ桿菌」が炎症を引き起こし、ニキビとなってしまうのです。
毛穴が詰まる原因として、ストレス、便秘、乾燥、思春期によるホルモン分泌、顔ダニなど様々な原因があげられます。
中医学ではこのような疾患をどのように捉えているのでしょう。
中医学では、「熱」や「湿」、または両者が合わさってニキビが発生すると考えます。体内に「熱」が発生する原因としては、自然界の熱の影響、ストレス、飲食不摂生(辛味、油物、酒などの過食)、身体の水分不足があげられます。「湿」が発生する原因としては、自然界の湿の影響、飲食不摂生(甘味、油物、酒などの過食)、臓腑の機能失調による水分代謝異常があげられます。
また、ニキビの大きさや赤みの程度には「熱」の強さが関係しており、比較的体力のある人には、より大きな赤みの強いニキビができ、気血が不足し比較的体力の少ない人には、小さく肌色に近い状態のニキビ(白ニキビ、コメド等)が発生します。
そこに「湿」が合わさると、ニキビの先端が膿んだニキビが発生します。
当院では、ニキビを中医学的に大きく4つのタイプに分けて治療します。脾気虚タイプ、胃熱タイプ、陰虚陽亢タイプ、湿熱タイプがあります。
それでは、タイプ別に詳しく見ていきましょう
脾気虚とは、脾の気が不足した状態です。
脾の気が不足する原因としては
などがあります。
脾の気が不足すると、水分代謝が悪くなり身体に湿(余分な水分)を溜めこみニキビが発生します。また、脾気虚タイプは気の流れがスムーズでないため、気が滞り熱が発生しやすくなります。また発散する力も弱いため、身体に熱がこもってしまいニキビが発生してしまいます。ただ、弱い熱(虚熱)のため、ニキビは赤みがすくなく、小さなニキビが散在します。
ニキビに特に関係する脾の作用について
脾を補い充実させ、脾が正常に働くようにさせます。
脾の気が充実すれば、水分代謝が活発になり、湿(余分な水分)がたまりにくくなり、飲食物からの栄養をとりいれ、皮膚にも栄養が行き渡るためニキビが治りやすく、発生しにくくなります。
また、虚熱が身体にこもっている場合は、脾の気を補うことにより体内の循環をよくし、熱を発散させます。
このタイプは飲食不摂生(辛味、油物、酒などの過食)や、ストレス、自然界からの熱などにより胃に熱がこもります。胃に熱がこもると、胃の気は本来下へ向かう作用(降濁作用)をもっていますが、熱の炎上性(まめ知識2参照)により上に向かいニキビが発生します。
このタイプのニキビは、鼻、口の周りから顎にかけてよく出来ます。赤く腫れ、痛みや痒みを伴うこともあります。
熱の炎上性→ストーブをつけた時など、熱い空気は上にたまりやすくなるように、身体に熱があれば上半身に熱がたまりやすくなります。そのため、ニキビは上半身に見られることが多いです。
胃の熱を冷ますことによって、胃が正常に動くようにします。胃が正常に動くことで、胃の降濁作用が働き、熱の炎上性により上がった熱を下に引き下ろします。
そうすることで、ニキビが治りやすく、ニキビができにくい身体にしていきます。
陰虚陽亢タイプとは、1.身体に水が不足し、熱(虚熱)が発生しているタイプと2、ストレスなどで熱が発生し、それにより体内の水分が損傷されるタイプがあります。
1・2共に、水分と熱の量が均等ではない状態です。たとえるなら、火事が起こりかけている時、火を消す水が不足した状態です。
このタイプのニキビは熱の程度が脾気虚タイプと胃熱タイプの中間で、赤みのある中程度の大きさのニキビができます。
1.身体に水が不足し、熱(虚熱)が発生しているタイプと2、ストレスなどで熱が発生し、それにより体内の水分が損傷されるタイプがあります。
1は、水を吸収しやすくして全身に水を巡らせます。そうすることで、全身を潤し結果熱が取り除かれ、ニキビを治りやすくします。
2は、熱の炎上性(まめ知識2参照)により上がった熱を引き下ろし、熱を沈めます。また同時に全身を潤し、損傷した水分を補います。その結果ニキビを治りやすくします。
両者とも熱が発生しにくい体質にし、ニキビができにくい身体にしていきます。
湿熱タイプとは過剰な湿(水・脂)と熱が身体に溜まった状態です。原因として、
次に症状とニキビの性状ですが、湿熱タイプは湿と熱のどちらが優勢であるかで症状が変化するのが特徴です。
症状 | ニキビの性状 | |
---|---|---|
湿が優勢の場合 | 下痢・身体の重だるさ・むくみ | つぶすと汁が出るようなニキビ |
熱が優勢の場合 | 便秘・口の渇き・不眠 | 赤みが強く、痛みや痒みを伴う |
また、湿熱は大きく分けて肝胆湿熱タイプ・脾胃湿熱タイプがあります。それでは、それぞれの原因と特徴的な症状を見てみましょう。
肝の気・津液の流れがうまく機能せず、湿熱が生じます。
同時に、脾の機能が低下している人は、飲食の不摂生からも影響を受けます。そのため、身体の上部に熱症状(イライラしやすい、鼻出血など)、下部に湿熱症状(胸脇の張り・陰部湿疹など)が出やすくなります。
脾の働きが低下しているため、湿が身体に停滞し、熱が生じます。そのため、心窩部の張り・頭面部の湿疹などの症状が発生します。
湿熱となった原因(体質)を四診法により弁証し、分析を行います。
身体の中の過剰な湿と熱を取り除き、排便・排尿などを促進して、身体の循環(気血の流れ)をさらに改善します。
またタイプ別の治療として、
肝胆湿熱では、脾の機能を補い、肝胆の熱を取り除き、肝の気・津液の流れを正常にします。
脾胃湿熱は、脾の状態が悪いので、脾の働きをよくし、湿熱を取り除き、湿を発生しにくくします。