「目が疲れる・ぼやける・かすむ」「目が痛い・充血する」「目が重い・しょぼしょぼする・眩しい」「涙が出る」といった症状は、多くの方が日々経験する事だと思われます。
一般的に「眼精疲労」とは、眼を使う仕事をするとき、普通の人では疲れない仕事でも容易に眼が疲れて痛くなり、頭痛、肩こり、吐き気等を起こす状態をいいます。
眼精疲労を放置しておくと眼疾患に繋がることもあるので注意が必要です。
(参考文献:医学書院 系統看護学講座)
屈折異常や調節異常によりおこる。
眼筋に異常がある場合におこる。
緑内障、白内障などの眼疾患によりおこる。
両眼の網膜にうつる像の大きさや形が異なることを不等像視といい、これによりおこる眼精疲労をいう。
眼には異常がなく、全身の衰弱・精神的疲労でおこる。
眼圧(眼球の内圧)が上昇し、視神経が圧迫されて視野が狭くなっていく病気です。一般的にはほとんど自覚症状がありません。しかし、治療せずにいると、失明することもあります。
眼圧が正常範囲(10~21mmHg)だが視神経が障害されることで視野狭窄がおきます。日本人の緑内障の約6割を占めます。
まず隅角(ぐうかく)とは、眼内を流れる水(=房水)の出口周辺部を言います。この出口が代謝障害等により房水を排出する事ができなくなると、眼圧は上昇し眼内の圧力を一定に保つことができなくなります。その為、視神経に影響を及ぼし視野狭窄房を引き起こします。
隅角が狭くなり、房水の流れが止まることで房水に押された虹彩が更に房水の出口をふさぎます。逆流した房水が眼圧を上昇させ、視神経に影響することで視野狭窄房を引き起こします。
白内障は、水晶体が混濁した状態をいいます。一番多い白内障の初期症状は、光がまぶしい、物がかすんで見えるという事です。水晶体が混濁する部位にもよりますが症状が進行すると光が良く通らなくなり、視力の低下へとつながっていきます。
(参考資料:医療法人 秀明会)
中医学では「肝は目に開竅する」という言葉があります。これは目と肝に密接な関係があることを示します。肝は体の各器官に気・血・津液がすみずみまで流れるよう、量や配分を調節しています。このことを東洋医学では疏泄機能といいます。また肝の疏泄機能は、精神活動にも影響し、疏泄が正常であれば、気機は正常に活動し、気血は調和し明るくのびやかな気持ちなります。しかし、疏泄の亢進・低下が生じると気・血・津液の運行も加速・減速してしまいます。減速すると気の流れが動きにくくなり、鬱滞した気は摩擦をおこすと熱を発生します。このことを「化火」と言います。
そこでタイプ別に症状を分けると、肝陽亢進(=疏泄亢進)では、頭痛・顔面紅潮と眼症状では、充血等を生じやすくなります。旺盛になった肝陽を沈める事でこの症状は調整をしていきます。
肝気うっ滞(=疏泄低下)では、ストレス等による情志の失調で疏泄機能が低下し、気が身体のすみずみまで流れなくなる事で滞りが生じ、目まで肝血を送ることができず眼疾患・眼精疲労を生じやすくなります。気血がスムーズに流れるように調整をしていきます。
最後に、血を主る肝が疲労などで消耗すると、目まで栄養を送ることができなくなり、視力減退・眼精疲労を生じます。すなわち、肝血が不足した時は肝血を補うことで目も同時に回復します。また、肝は生命の源である「腎」と深い関わりがあります。その為、肝血が不足すると腎は腎精を血に変身させて肝血を補い、反対に腎精が不足すると肝は肝血を精に変身させお互い補い合うことで機能を維持します。これを「肝腎同源」・「清血同源」といい、眼疾患との繋がりもあります。
肝には、「疏泄機能」と「蔵血機能」があります。「疏泄」は、体の各器官に気・血・津液がすみずみまで流れるよう、量や配分を調節します。また精神活動にも影響し、疏泄機能が正常であれば、気機は正常に活動し、気血は調和し明るくのびやかな気持ちなります。しかし、失調すると精神的変化(抑うつ、興奮など感情や気分の障害)が現れやすくなります。また、後者の「蔵血機能」により肝は、肝血の貯蔵、血量の調節をしています。
肝血虚タイプの原因は、血の生成不足(先天的な胃腸障害や虚弱体質、不摂生な食生活やダイエットなど)、慢性病、出血過多(出産)などでよく見られます。つまり、肝血不足になると、各器官に栄養を行き渡らせることが出来ず、さまざまな病変を引き起こすことになります。例えば、肝血不足体質の人が、携帯電話やパソコンなどを使用することで、更に肝血は消耗し、すぐ目の疲れを感じやすくなります。
症状 | 分析 |
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顔や爪の色が悪い | 肝血不足により、顔部や爪が栄養されないため。 |
爪がもろく割れやすい | |
二枚爪や縦すじが入る | |
貧血性、立ち上がり時めまい | |
頭痛(脹痛) | |
手足のしびれや筋肉のひきつり(こむら返り) | 肝は「筋を主る」といい、筋肉の働きにも関係する。 手足の筋肉に栄養(血)を送ることができないため。 |
目の周囲のけいれん(ぴくぴく) | |
視力の減退・目の疲れ | 肝は「目を主る」といい、目と密接に関係する。 |
目の乾燥・かすみ、目の異物感・とり目・夜盲症 | 肝血不足により、目や耳が栄養されないため。 |
耳鳴り(低い音・小さい音) | 腎精は「耳を主る」。肝血不足により頭部を滋養できない。 |
月経過少・閉経 | 肝血不足のため月経量が少なくなる。 |
血の生成を促し、目の滋養力を高める治療をします。
肝陽亢進は、下記の絵のように「肝陽上亢タイプ」と「肝火上炎タイプ」の2つのパターンがあります。
体に何らかのストレス(過労、飲食不節、加齢、慢性病、房事過多など)が体に加わることで、中医学で言う、「内火」という火が体内に生じます。1.陰陽のバランスが正常の場合、「内火」が生じると、身体の余分な火を「津液」という、身体を潤す水が火を抑えてくれます。
しかし、バランスが崩れると…。
「津液」が不足し、交感神経が高ぶった状態。
症状 | 理由 |
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イライラしやすい | 交感神経が高ぶり、精神活動のバランスが失調する。 |
めまい・耳鳴り(慢性的で高音) | 水の不足により熱が強くなり、上部(頭・顔面部)に症状が現れる。 |
目の充血・頭痛(脹痛) | |
頬が赤く、ほてりやすい・のぼせる | |
不眠・多夢 | 交感神経の高ぶりで夜間脳が活動状態。リラックス出来ない。 |
足腰がだるく、力が入りにくい | 精の不足で筋骨も養われないため。 |
舌紅・脈弦細数 | 体内の熱で舌は紅く、脈は熱の勢いで緊張し張った状態。 血管が細いが、血流量は同程度のため血流速度が速くなる。 |
のどが渇くがあまり飲めない | 腎精・津液=水の不足で体内に熱が生じるため。脳や心臓の水の消耗が栄養不足を生じ各所の機能低下をおこすため。 |
手の平や足の裏がほてる・健忘・心悸 |
体に何らかのストレス(過労、飲食不節、加齢、慢性病、房事過多など)が加わることで、中医学で言う、「内火」という火が体内に生じます。陰陽のバランスが正常の場合、「内火」が生じると、身体の余分な火を「津液」という、身体を潤す水が火を抑えてくれます。肝火上炎は、内火が盛んになりすぎることで「津液」が火の勢いを抑えることが出来なくなります。「津液」の量が正常なのに対し、火が強すぎて一定量の水では賄いきれない状態です。
「津液」の量は正常。しかし、熱が強すぎで交感神経が高ぶった状態。
症状 | 理由 |
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イライラしやすい | 熱が強すぎることで交感神経が高ぶり、精神活動も失調。リラックスできない。 |
めまい・耳鳴り(突発的で大・高音)・目の充血 | 熱は炎上性があるため、上部(頭・顔面部)に症状が現れる。 |
頭痛(脹痛)・中耳、外耳炎・口内炎 | |
顔が全体的に赤く、ほてり、のぼせる | |
口が苦い | 肝症状は胆に影響する(肝胆相照)。胆の津液が熱により蒸発し、胆気が上がり口が苦くなる。 |
胸脇部灼痛 | 熱症状が胸脇部に鬱滞し、流れが悪くなるため。 |
不眠・悪夢 | 熱により頭部が充血し、イライラしてリラックス出来ないため。 |
鼻血が出やすい・吐血 | 熱により充血して流れが速くなっているため、血管を消耗し出血しやすい状態になる。 |
月経過多(鮮紅色)・経早 | 熱が血行を乱すため。 |
便秘・尿の色が濃い | 熱により体を潤す水(津液)が消耗するため。 |
舌紅・脈弦数 | 肝経の実を表し、火が盛んなことを表す。 |
張った感じのする頭痛、めまい、イライラして怒りっぽい、耳鳴り、目の充血
日頃ストレスを感じやすく、憂うつ感や気がつけばため息がでている。
これらの症状は、肝がもつ疏泄機能(=身体のすみずみまで気血津液をスムーズに巡らせる機能)が停滞しているために現れます。疏泄機能が低下すると、気・血・津液の流れも低下し、その結果、目まで運ぶことが出来なくなるため、眼疲労などの眼症状が現れやすくなります。
症状 | 理由 |
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抑うつ感・イライラ | 気の巡りが停滞し、発散出来ないため。 また、停滞が長期間続くことで気の流れが動きにくくなり気分もすっきりしないため。 |
胸脇痛部・下腹痛(小腹部)張った痛み(膨満感を伴う痛み) | 胸脇部・下腹部に気の滞りがおき、気血の巡りが低下するため。 |
閉経・月経遅延・月経不順 | 肝は月経周期を主り、気の停滞が肝の疏泄低下につながるため、気血が全身をくまなく巡らず瘀血が生じる。 |
以上のように、気滞ができにくい体質へ改善することで、少々のストレスにも耐えられるようになり、気滞が原因となる不調は起こりにくくなっていきます。
陰液とは、全身や各臓腑に、「潤い・栄養」を与え、肌の乾燥を防いでいるのもこの陰液です。「陰液」の「潤す作用・栄養」は、身体の血液や体液などを現わします。血液(肝血)や体液(陰液)が、何らかの原因(ストレス、疲労、飲食不節、加齢に伴う老化、慢性病など)で、消耗してしまうと、眼を潤し、栄養することができなくなります。また、体液(陰液)が消耗すると、少し身体に熱が発生しやすいので、より目を乾燥させてしまいます。このようにして、目の潤い・栄養がなくなり、ドライアイや栄養不足で眼精疲労が生じていきます。
症状 | 理由 |
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頭痛・めまい・耳鳴り(慢性的で小さな音、蝉が鳴くような) | 精血不足のため、顔面頭部がうまく栄養できない。 |
身体が痩せていて太りにくい | 精血不足で筋肉を栄養できない。 |
潮熱・微熱・手足がほてる・頬が紅い・盗汗 | 身体の水が不足して、身体の中で発生する熱を抑制できない(→虚熱)。そのため、身体のあちらこちらに虚熱による熱症状がおこる。 |
尿の色が濃い・少尿 | 虚熱のため、尿は濃くなり量は減る。 |
皮膚の乾燥・大便乾燥・舌紅・苔少・口渇少飲 | 陰液(水)が不足することで便の水分も不足して乾燥し、出にくくなる。 |
腰・下肢のだるさ | 腎精不足により、足腰の精血も不足するため。栄養されずだるい。 |
不足した肝と腎の陰液(:水分)を補うことで、身体は潤い、精血も充実します「滋補肝腎(じほかんじん)」。目も潤い、栄養されるため、目の乾燥が防止されします。また、上述したように肝は生命の源である「腎」と深い関わりがあり、肝血が不足すると腎は腎精を血に変身させ肝血の役割を担い、反対に腎精が不足すると肝は肝血を精に変身させお互い助け合うことで目の潤い(=陰液)を補い、充血等の眼症状を改善していきます。
デスクワークやパソコン、ゲームなどで目を酷使した時に最適なツボ。どんな症状の眼精疲労にも有効。気持ちのいい程度に、軽くゆっくりと押すのがポイント。
肝は気をスムーズに流れるように調節する機能と、血をプールする機能、月経血を供給する機能を担っている。
肝の気の流れがスムーズにいかないと、感情・気分の障害が出やすくなる。肝の血に関する異常が出る場合には、月経の異常が高率にみられる。胆は気の分配を支配しており、何か問題が起こると、病的な不安感や驚きやすさ・決断力の低下・ため息などの神経症状が現れる。
肝や胆の病態は、脾や胃の機能が抑制される形での影響が出やすいことが知られている。脾は消化吸収機能をコントロールし、全身の精気の原料を供給すると共に、全身に気や津液を配分する機能を担っているとされる。胃は脹管の総称と理解されている。
腎陰は一身の陰液の根本と言われます。臓腑、脳、髄、骨を滋養し、発育や生殖を維持します。また、身体の陽気の亢進を抑制し、身体に余分な熱が溜まるのを抑制します。
ストレスや慢性的な疾病、房事過多(過剰な性交)などにより、体内の津液を消耗・損傷して陰虚となり、血量も低下して血不足となります。そして上気(頚から上の気)が不足し、脳や髄等を滋養することができず眩暈が起こります。
ストレス、過労、飲食不節、加齢、慢性病、房事過多、熱性の薬物(抗生物質などの乱用)などにより肝と腎の津液が不足します。
肝と腎の津液が不足すると陽(熱9を制御できなくなり過剰に亢進します。過剰に亢進した陽(熱)はさらに津液を消耗させるので悪循環になります。
例えば車のエンジンとラジエターの関係に置き換えてみましょう。
エンジン(陽)が過剰に熱を持たないようにラジエター(津液)はエンジンを制御しています。
しかし、ラジエターの水が不足しているとエンジンを制御出来ず、過剰な熱を持ちます。その過剰な熱を冷却する為にさらにラジエターの水を消耗します。
このように津液が不足します。
陽(熱)は上に上昇する性質を持つ為身体の上部(頭、顔)を犯し、脳卒中を引き起こします。
津液が不足すると、皮膚は乾燥するように細胞の組織自体も水分を失うので、もろくなり損傷しやすくなります。血管の壁を作る細胞も損傷が激しいと出血を起こしやすくなります。また血管壁が剥がれて血管につまりやすくなります。
このタイプは、出血・梗塞・虚血性の脳卒中を起こします。
肝は血を蔵し腎は精を蔵しています。
血が不足すると腎精を血に変えます。また反対に精が不足すると肝血を精にし、お互い補い合います。
この事を東洋医学では「肝腎同源」・「精血同源」と言います。
肝と腎はお互いに助け合い滋養しているので、どちらかの陰液が不足すると肝腎共に影響します。
人の身体には陰と陽がありお互いに増えたり減ったりしながら均衡を保っています。
この場合は均衡を保てず陰が不足になった状態です。
陰液不足によって生じる、全身あるいは臓腑に対する濡潤、滋養の機能失調を表わす証候です。
中医理論では、"陰"は血液や体液、臓器などの物質を概括してい ます。陰虚とは一般に血液・体液の減少や、慢性的な組織の障害をいいます。本証は慢性疾患が長引いて体力が低下した方や、生来の虚弱体質の方などにみられます。
陰虚は主に腎陰虚のことで、陰虚の程度が比較的軽い方は腎陰不足といいます。
陰虚の方は自律神経に混乱をきたして、ほてり感や熱感を訴えます。これを虚熱または陰虚内熱といいます。虚熱は自覚的な熱感や微熱であり、高熱はないです。高熱があるのは実熱といいます。
本証は肺結核や自律神経失調症などの慢性疾患によくみられます。
陰虚内熱(虚熱)の状態とは、体力は消耗していますが、自律神経の興奮や精神の高ぶりのある状態をいいます。
そのために倦怠感はつよいですが、気が高ぶって眠れず、体のほてり、手足のほてり、微熱、寝汗、いらいらして落ち着かないなどがみられます。また、臓器のレベルでみると、例えば心臓の臓器としての力は低下したため、頻脈になった状態や、更年期や老年期で体力は低下したが、逆に血圧が上昇した状態なども陰虚証の証候にあてはまります。
肺結核・自律神経失調症・糖尿病・便秘
鑑別のポイント(血虚証と陰虚証の比較)
血虚証を特徴づけるのは血の不足によって生じる種々の症状。陰虚証を特徴づけるのは、陰虚内熱による症状がみられることです。
証 | 異なる症状 | 共通の症状 |
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血虚証 |
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陰虚証 |
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治法説明・・・陰虚証を治療する方法です。
体内の陰液不足で生じる腎には、「腎精」を蓄えておく機能があります。東洋医学では、腎精には、「髄(ずい)」を生じる働きがあるとされています。「髄」とは、骨の内部にあり、「骨」に栄養を補給し、また、脳機能とも関係があります。腎精が先天的または後天的に不足することで(慢性的な疾病・肉体疲労・老化、房事過多)、「髄」も不足し、骨の弱体化や脳機能に支障を来し、これが「骨粗鬆症などのような転倒や歯がもろくなる、足腰がだるい」などといった症状や「認知症などのように物忘れや記憶力・判断力の低下」といった症状の他、「発育・生殖機能の減退・抵下」、「視力や聴力の低下」などの症状となります。
目頭と鼻のつけ根のくぼみ。デスクワークやパソコン、ゲームなどで目を酷使した時に最適なツボ。どんな症状の眼精疲労にも有効。気持ちのいい程度に、軽くゆっくりと押すのがポイント。